来るべき震災に備える 石川ひろし×高橋満徳さん

私は長年、赤十字の救急法指導員として活動を続けながら、大きな災害が起きたときはボランティアとして被災地に入り救護活動に参加しています。
22年前の阪神淡路大震災において、共に現地で救護活動を行った日本赤十字社千葉県支部事業部長の高橋満徳さんにお話を伺いました。

ひとり一人が救護の知識を持つことで助かる命がある

高橋さん
目の前に倒れている人がいても、何もできなければ助かる命も救えませんので、一人でも多くの方に救急法を学んでもらえるよう活動を拡げています。そして、万が一のときは勇気を持って蘇生法等の対処をしていただきたいです。
石川さんは、普段の会話のなかでも救護活動の話をされますから、それまで関心がなかった方も防災や救急法について考えるきっかけになっていると思います。これはまさに日常的な啓発活動なので、石川さんのような方が各地域に増えたらありがたいですね。

石川
講習会では経験談を交えて指導しています。例えば、45分間も心肺停止していた方が、今は元気で暮らしているという話は多くの方が興味を持ってくれます。いち早く蘇生法を開始することで助かる命があることを、これからも広く伝えていきます。

救援物資そ迅速に届けるために

高橋さん
災害が起きた場合は、最初に消防へ通報し行政を通してから赤十字に情報が入ることが多いのですが、特に救援物資が必要なケースは、できるだけ早いタイミングで要請が入るようになるとありがたいですね。

石川
なるほど。消防・自治体・赤十字の連携と、迅速な情報伝達ですね。たしかに救援物資の手配はスピードが肝心です。防災は私が特に力を入れている分野ですから、しっかりと取り組んでいかなければと思います。

「救護者心身の安全」について

高橋さん
現在も救助者からの声を聞いたりする機会がありますが、救護する側の精神的ケアも必要です。
救護活動を行った方は、カメラを向けられたり、周囲から心ない言葉を投げかけられたり、かなりのストレスを受けることがありますので、今後さらにメンタルケアに力を入れなければと考えています。
それに、救助者がまず自分の身の安全を確保することも重要ですから「救助者の心身の安全」について取り組みを強化する必要があります。

石川
たしかに。誰かを助けようとして救助者が命を落とすことは決してあってはなりません。講習受講者には「救助者の心得」を確実に身につけてもらえるよう、私も引き続き指導に力を入れていきます。

被災地ボランティアに参加を

高橋さん
赤十字では被災地でのボランティア活動に一人でも多くの方が参加してもらえるよう働きかけています。石川さんはご自分のボランティアの体験談を周囲によく話されているので、それをきっかけに関心を持つ方が増えてくれればと。

石川
以前、お寿司屋のご主人が「自分にはボランティアなんて」とおっしゃっていたので、「避難所でお寿司を提供しては?」とお伝えしたところ、その後、トラックで被災地に駆けつけ、お寿司を握ってみなさんを元気付けたそうです。こうした温かい気持ちが伝わるボランティア活動はだれでも可能だと知ってほしいですね。

災害から命を守る自助共助の仕組み

高橋さん
災害時に命を守るために重要視されているのが、まず「自分の身を守る」、次に「地域の方々と助け合う」という自助共助の仕組みです。実際に阪神淡路大震災では近所の方々によって瓦礫の中から救出されたケースも多くありました。町内会などの小さなコミュニティーでも防災組織を作り、来るべき災害に備えていただきたいです。

石川
私も災害時における地域コミュニティーの重要性は非常に高いと感じています。行政としても住民に対して避難訓練や防災活動を通じた啓発活動を続けていきます。

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