「新鮮で安全な野菜を安く消費者へ届けたい」という強い思いを持つ藤代さんは、長作町で農業を営みなら地域活動を続ける地元では中心的存在。当時、地元の大手直販所の立ち上げに携ったほか、当直売所「藤代農園」を運営し地元の採れたての野菜を安く提供するなど、現在の新鮮野菜の流通に大きく貢献されています。そんな藤代さんに農家の実情や課題についてお話を伺いました。
藤代さん
農家の一番の悩みは跡継ぎがいないことです。私も含め、みなさんも高齢で、次の世代に引き継いでもらいたいのですが、農業のやり手がいないんです。息子さんが継いでいる家もありますが、後継者不足で困っているんですよ。
石川
みなさまが近郊農業を営まれているおかげで、私たちはおいしく新鮮な野菜を食べることができます。農家のみなさまには食料を供給するという大事な役割があるので、行政としても農業を衰退させてはならない、支えていかなければ…。どうやったら次の世代が育つか、一緒に考えて取り組んでいきたいと思っています。
藤代さん
次の世代を育てるために、行政や関係団体は時代に合ったサポートをする必要があると思っています。例えば、農家を対象としたお見合いパーティーを開催している団体もありますが、そうした取り組みがまだまだ足りません。
石川
たしかに。出会いの場所を作るというのも大切ですね。他にも、若い人たちに「農業は楽しくてやりがいがある」ということをわかってもらう工夫も必要だと思います。行政としても支援していかなければならない課題です。
藤代さん
私が構想しているのは田園都市です。調整区域には家を建てることはできませんが、それを緩和し一角に家を建て、その他は畑として残す。そこへ住んでいる人に近所の農家が野菜づくりを教えて、一緒に農業を守りながら地域を盛り上げていく。そんな田園都市を作っていけたらと考えています。そうすれば、移住してきた人と地元の方の間にも絆が生まれます。お勤めしている方と農家が力を合わせて畑や地域を守るシステムができたら、災害時にはみんなで助け合えるので、防災に強い町にもなると思います。これからは、農家と地域住民が共存する方法を模索しなければなりません。
石川
それはすばらしいですね。調整区域でも無作為に家を建てるのではなく、やはり秩序を持って建設しなければ街づくりにはならないので、行政と農家さんの間をきちんと取り持つ役目も必要かと。現在は宅地造成によって畑が次々となくなっています。昔の田園風景が住宅ばかりになってしまったら、都内や近隣の方に食料の安定供給ができなくなりますから、そのためにも畑は守っていかなければと思います。
藤代さん
農家以外の人が農業を始める際は補助金が出るなど、新規参入者には充実した制度がありますが、農家を守る制度が足りないと思います。行政は農地を守るより農家を守ってほしいです。
石川
これまで続けてこられた農家さんたちを守る。そして後継者対策をする。これからの課題としてしっかりと考えていきたいと思います。例えば、休耕田が荒地にならないように、ボランティアを募って除草作業をしたり、田植え体験会をしたり、地域の方々が力を合わせてできることもあると考えています。食の安全のためにも近郊農業を守っていかなければならないと痛感しました。
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